進展はこれから
「ライブチャットって、お話した相手と実際に会ったりとかするのかしら?」
エリは、自分より長くライブチャットをやっているタカアキに聞いてみた。
「うーん。そういう人もいるらしいけど、たいていは、男のほうが会いたいって言い出して女性のほうが嫌がるって、そういうパターンが多いらしいけど? エリさんも言われたんでしょう? 会いたいって」
「何人か、そんなこと言ってたわね。でも、ロクに話もしてない相手とは、ねぇ」
「僕は、だけど、実際に会いたいんだったら、フェイスブックなんかのほうがいいかな、って思うよ。
ライブチャットって実際に会ってるようなコミュニケーションが出来るツールだから、そういう使い分けが出来ないとダメだろうって」
「フェイスブックは私もやってるけど、まあ、確かに。あっちのほうが実際に会えそうな相手よね。タカアキくんもフェイスブックやってるんだったわよね?」
「僕のは半分仕事だよ。ウェブサイトにブログ、BBSにチャット、フェイスブックにライブチャット、スカイプにツイッターまでやって
ケータイは2台持ちだし、アイパッドも使ってるからね」
「凄いのね? 頭がこんがらがりそう」
「それぞれに長所短所があるから、そこを理解してれば大丈夫だよ。理解してないと、言う通り、こんがらがるだろうし」
そういうことも把握・理解するのがデザイナーの仕事だと、タカアキは説明した。
エリは自分が店長にでもなったらタカアキを真似てみるのもいいかな、と思ったが、今はライブチャットだけで満足だ、とも思った。
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2011年9月13日 | コメント/トラックバック(0)|
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仲良くなった二人
「飾ってないところがさ、エリさんらしいなって」
半そでパジャマでスッピンでベッドの上にあぐら、確かにエリは飾っていない。
仕事がブティックの副店長で目一杯着飾るので、プライベートでは地味にしていてボーイフレンドがいた頃も簡単なメイクくらいで、シンプルな服装だった。
帰宅すればすぐにパジャマに着替えて、ライブチャットで相手に姿が見えるので最初こそ服装などに配慮していたが
それだと仕事をしている時と同じなので、現在に至る。
「ブティックの店員には見えないよ」
「そっちだって、デザイナーには見えないけど?」
自分がタカアキにどう映っているかはともかく、タカアキのほうは大学生その一といった印象で、ルックスはいいが割と地味に見える。
「僕は仕事中もこんなだけど? 上司なんかはブランドのスーツなんか着てるけどああいうのは一種の営業だからね。エリさんもでしょう?」
「うん、そうね。私が着てるものと同じものをオススメしたりなんかもするしね。
ブティックの店員なんてどこもそんなよ? 好きで着てるには違いないんだけどオフィシャルとプライベートの区別がつかなくなるから、普段は地味系なのよ。とか、こんなとかね」
エリは自分のパジャマのネコマークを指差す。
パジャマはブティックのものではなく、ファンシーショップで気まぐれで購入したものだった。
「似合ってるからいいんじゃないかな?」
キャラもののパジャマに似合うも何もないが、まあ、言われて嫌な気分にはならない。
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2011年9月13日 | コメント/トラックバック(0)|
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運命の人をみつけよう
「エリさんって、なんていうのか、面白いよね?」
「面白いって? 私、ジョークとかそういうの、あんまり得意じゃないわよ?」
タカアキという男は、見た目もそうだが、まるで弟のような感じだった。
タメ口だが全く嫌味に聞こえず、幼いようでしっかりとした考えがあって、でも腰が低い。
「アネゴ肌っていうのか、お姉さん気質っていうのか、男勝りっていうのか……」
「何それ? 私ってそんな怖い感じ? 色気がないとか?」
「いや、そうじゃなくってさ、カッコイイって、そんな。
バリバリのキャリアウーマンとか、そういうノリだよね?」
「まあ、こんなでもいちおう副店長なんて肩書きだからねー。
やっぱり気になる?」
「いいんじゃないかな? 飾ってない感じが女性っぽくなくて、そこが逆に女性っぽいし」
「ん? つまり、どっち?」
「エリさんっぽいって、そういう意味だよ」
褒められているようだが、エリはタカアキが何を言いたいのか、ピンとこなかった。
「僕もさ、エリさんの前に何人かと喋ったんだけど、みんな、典型的な日本女性って感じでね、喋っててもあんまり楽しくなかったかな? 見た目は良かったんだけどね」
見た目だけで中身がスカスカな人間は、男性にも女性にもいると、そういうことだろう。
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2011年9月13日 | コメント/トラックバック(0)|
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老若男女年齢層も様々
エリがライブチャットを始めて4人目の男性は、エリの10歳年上だった。
つまり、35歳。見栄えもいいし話題も豊富でしばらく楽しく喋っていたが、妙な違和感があって
何だろうと思っていたら、店長に小言を言われているような感覚だった。
時折、説教というのか、諭すような科白が入って、その男性が職場でナントカという肩書きがあって年下のエリを出来の悪い部下のように扱っていると気付いた。
それでもしばらく調子を合わせて喋っていたら、パジャマ姿でベッドにあぐらという格好がダメだとか言い出したのでうっとおしくなってログオフして、ライブチャットにはこういう男性しかいないのか、とウンザリした。
チャージしたポイントがまだ残っていたので暇潰しにでもと数日後にログインして、大して期待もせずに待っていると、タカアキがアクセスしてきた。
エリと同じ25歳で建築関係のデザイナーと名乗ったので、ファッション関係では有名なデザイナーのことを話題にしてみたらそれが通じて、タカアキ側が建築関係で有名な建築士だとかデザイナーの話をエリにも解るように説明してくれて、なんというのか、ノリが合った。
気付けば愚痴を言い合ったりですっかり打ち解けていた。
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2011年9月13日 | コメント/トラックバック(0)|
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ボキャブラリーを増やして楽しむ
エリがライブチャットで初めて喋った男性は、エリよりも随分年上の、パッとしない相手だった。
自己紹介が終わると、趣味は?
と聞かれて、音楽鑑賞と返すと自分はナントカというイギリスのバンドのファンで、ギタリストがどうこうで使ってるギターがなんだかんだと聞いたこともない単語がずらずらと並んだ。
エリは洋楽も聴くが、楽器などの知識はなかったので最初こそ面白かったがギタリストではだれそれが有名で使っているギターはナントカでと似たような内容がエンドレスで続いて会話についていけず、相槌を打っているのが面倒になったので食事だかシャワーだかと適当に言って回線を切って、以降、その相手とは喋っていない。
次の相手は、自己紹介が終わるか終わらないかの辺りでエリのプロポーションがどうとかロングヘアがどうとか言い出したので、挨拶もせずにログオフ。
この辺りで、ライブチャットのためにメイクをしたり服装をあれこれが面倒になって、パソコンテーブルの椅子ではなくベッドの上からノートパソコンに向かうようになって、パジャマであぐら、という格好にした。
3人目はそれを何か勘違いしたのか、挨拶もそこそこでケータイの番号を教えろだとか、実際に会いたいだとか言い出して
パソコンモニターからの目つきも胡散臭かったので、適当な言い訳をして回線を切った。
他の女性利用者のプロフィールを見て楽しくお喋りを云々と書いているのが殆どだったのでそんな内容に変えてみた。
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2011年9月13日 | コメント/トラックバック(0)|
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ライブチャットは気軽に話せる
「タカアキくん、モテるでしょうに、どうしてライブチャットなんてやってるの?」
エリは尋ねた。
タカアキはエリと同じ25歳だが童顔で、大学生くらいに見えるが、親しみのある二枚目だった。
ガールフレンドが二人三人くらいいても全く不思議でもない。
「自分で言うのもどうかと思うけど、学生の頃は、まあモテたほうかな?でも仕事のほうに夢中になって、気付いたらフラれてた、そんな感じ。
エリさんと一緒だね。
しばらく仕事に専念しようって決めて、でもそれだと窮屈だから、こうやって息抜きしてるとか、そういうノリかな?
ほら、男性は理屈で動いて、女性は感情で動くっていうでしょ?理詰めでやってるとフィーリングが鈍るというか、新鮮さが消えるっていうのか、そういうのを補うみたいな?」
「ふーん。
つまり、今も仕事とかデザインのために喋ってるって、そういうこと?」
「かもね。まあ、楽しいし息抜きにもなってるし、仕事って感覚はあんまりないよ。エリさんは?」
「私?私は、どうかな。息抜きっていうより、ストレス発散って感じ?最初はこう、ボーイフレンドでも、なんて思ってたんだけど、相手が露骨にそういう態度だと何だか引いちゃって、止めようって思ってたらタカアキくんと出会ったってところ。
言ったかしら?最初の何人かとはあんまり話が合わなかったって」
初めてライブチャットで喋った相手のことを思い出す。
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2011年9月13日 | コメント/トラックバック(0)|
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会話はこんな感じ
タカアキという男は、建築関係のデザイナー見習いからかパソコンやネット関係にはかなり詳しくて、エリが自分の勤めるブティックのウェブサイトやブログを教えると幾つも修正したほうがいい箇所がある、と丁寧に教えてくれた。
ブティックのウェブサイトは店長が専門業者に頼んで作らせたものだったがエリは正直あまりパッとしないな、と思っていた。
ブログのほうは店長が作ったもので、こちらもテンプレートなもので、ありきたりだった。
仮にもブティック、オリジナルデザインの商品を扱っているのだから、とは思っていたがエリはそういった方面の知識が浅かったので、フェイスブックのほうに専念していた。
ライブチャットで知り合ったタカアキが、エリにも解る単語で修正案をあれこれ教えてくれてメモ片手でそれを聞いたエリはすぐに店長に修正案を伝えて店長がそれをそのままウェブサイトデザイン会社に伝えて修正させてブログも修正して、どちらもブティックのイメージに近いものになった。
「ねえ、タカアキくん?うちのサイトのデザイン料、本当にタダでいいの?」
「ああ、またその話?最初に言ったでしょう?
ダベり相手になってくれるならタダでいいです、って。
第一、あれくらいじゃあギャラなんてもらえないしね」
見習いとはいえ、さすがはデザイナー。
エリは感心した。
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沢山の人の中から
エリは元々、パソコンだのインターネットだのには詳しくなく人並み程度だった。
勤めているブティックの店長が店のウェブサイトを作ってそこにブログを置いてこまめに記事を更新していたので、客の何人かがコメントを残してくれていた。
その流れでSNSをやって欲しいと副店長であるエリは言われてブティックの宣伝を兼ねてフェイスブックにあれこれ書いていて常連客の何人かとやり取りをしているうちに、オフィシャルもプライベートも女性相手なのが嫌になって、ライブチャットを始めた。
プロフィールにブティックの宣伝文句を入れようかどうか悩んでまさかライブチャットでも女性相手ということはないだろうと止めて簡単なプロフィールで新規会員登録して、30分、30ポイントをキャッシュカード決済で購入してライブチャットを試してみた。
ちょっとだけ気合の入ったメイクとお気に入りの服装での最初の4人は全員年上でそれでいて薄っぺらい内容の話題しかなく、馬鹿馬鹿しくなって止めようと思った日に、タカアキからアクセスがあった。
営業用スマイルで自己紹介をしていると、同い年で建築関係のデザイナー見習いだと言ったのでデザインだとかそういう話をしてみたら、ビックリするほど話が合って、すぐに親しくなった。
ライブチャットでのマナーだとかトラブルだとかを事前に自分なりに調べていたエリだったがタカアキが砕けた、それでいて嫌味にならない調子で喋るので敬語はすぐに消えて今ではお互いに悩みや愚痴を言い合う、友達のような感覚になっていた。
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ライブチャットコミュニケーション
ライブチャット 02
「僕には、相手の男の気持ちも解るし、エリさんの気持ちも解るから、どっちがいいとかは言えないね」
ノートパソコンの向こうにいるタカアキがそう言うと、今度はエリが唸った。
エリがライブチャットを始めて5人目くらいで親しくなった、1ヶ月ほどの付き合いのタカアキはエリと同い年で
建築関係のデザイナー見習い。似たような職種なのでノリが合って、すぐに仲良くなった。
タカアキはヘッドセットタイプのマイクで、Tシャツにジャージで
椅子に座って難しい顔をウェブカメラに向けている。デザイナー見習いだけあって、Tシャツや部屋はシンプルながら洒落ている。
「仕事が楽しいからって別に無視してたとか、そういうんじゃあないのよ?
ただ、なかなか会えないってだけで、でも月に2回くらいはデートしてたし、メールは殆ど毎日だったし。それでも足りないのかしら?」
普段は後ろで一つに結んでいる、おろした腰までのロングヘアの頭頂部を指でカリカリとやって、エリは眉間にしわを寄せる。
「エリさん、また怖い顔してるよ? 折角の美人が台無しだ」
言われたエリは、唇を尖らせて「不機嫌だ」といった表情を作る。
「付き合ってて、月2回した会えないってのは、さすがに少ないかな? 遠距離恋愛じゃあるまいし」
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ネットで恋愛相談
25歳のエリが勤めているのは、大学時代にアルバイトとして働いていた小さなブティック。
オリジナルデザインのものも置いていて、それでいてリーズナブルなので、小さいながらなかなかに盛況である。
卒業して4年、アルバイト時代を入れて6年勤務で今では副店長という肩書きで
仕事はやりがいがあるし楽しいし給料も悪くないが、エリには一つだけ不満があった。
相手をするのが同じ女性ばかりで、男性との出会いがほぼないということ。
友達と呼べる男性は何人かいるが、ボーイフレンドとは2年前に別れた。
理由は、エリが仕事に没頭して俺を見ていないから、そう言われた。
「――って言われたのよ、どう思う?」
自宅のノートパソコンに向かって尋ねると、画面の中の男性が「うーん」と唸った。
23時。エリはベッドの上であぐらをかいて、枕元のテーブルの上に置いたノートパソコンのウェブカメラに向かって、やれやれ、とゼスチャーしてみせた。
仕事中はクールに着飾っているが、半そでパジャマは、ネコのキャラクターがプリントされていて、小学生だか中学生向けのように見える。
仕事が終わって帰宅して、シャワーを浴びて食事を取り、ベッドの上でライブチャット、これがこの半年のエリの生活パターンだった。
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